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Channel: 小野崎太鼓店@宇都宮
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附締太鼓あれこれ

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真面目モード継続中でございます





本日は附締太鼓について




この『ツケシメダイコ』







…どんなん?



という方もいらっしゃるのではないでしょうか







小野崎太鼓店的にいちばん分かりやすくご説明すると

とんとん拍子型の和太鼓のことです




雑!



(ちゃんと後程写真で解説させて頂きます)













で、この附締太鼓ですが製作方法によって


・ボルト締め





・紐締め






大きく2つに分かれます





言わずもがな紐締めが元々の附締太鼓の製出方法ですが

近年ではボルト締めの方が需要が高くなりつつあるようで紐締めに比べてボルト締めの方がお値段も少々張り気味です





製法以外の違いは何なんですか?と聞かれることも多いので

ボルト締め、紐締めそれぞれの長所と短所をまとめてみました





◆◆ボルト締め◆◆



◆長所◆

・革を締めるセルフメンテナンス作業が簡単

・当店に持ち込んで頂いての簡単な締め直しなら料金が発生しない



◆短所◆

・紐締めに比べて重い

・たたくと金属音がする



◇◇ボルト締めの音質◇◇

・硬くシャープ

・お囃子に向いている




◆◆紐締め◆◆



◆長所◆

・軽い

・音色が本来の附締太鼓のもの


◆短所◆

・締め直し作業に手間がかかる

・紐締めの場合締め直しには職人の技術が必要となるため料金が発生する



◇◇紐締めの音質◇◇

・華やかさと広がりがあり、柔らかい












このような感じです


ボルト締めの短所は紐締めがカバーし、紐締めの短所をボルト締めがカバーしていますね



どちらがより優っている、どちらが劣っているというものではありません





音質に関してはあくまで相対的なものであるので、最終的には好みで選んで頂いてもいいと思います




長女が個人的に好きなのは紐締めですね

父や職人さんたちの手仕事ぶりの美しさをはっきり見てとれるのと、私は紐締めの音質が好きなのです






…そんな私の個人的な好みはどうでもよくて







気をつけて頂きたいことが一点


ボルト締めのセルフメンテナンスです




ボルト締めの附締太鼓なら締め直し作業は簡単と紹介しました、



しかしいくら締め直し作業が『簡単』とは言え、それはマニュアル車よりオートマチック車の方が運転が簡単、に近いニュアンスで



附締太鼓の仕組みを理解しないまま好きに締めていくと知らず知らずのうちに和太鼓を傷めることになります










実物を見ていただければわかりますが、両面の革に対してボルトは垂直、胴をぐるりと一周するボルトの固定具は完全に平行になっています






これはすなわち、どのボルトも同じ圧力で同じ方向に革を締めている、ということになります
(当然これと同じことを紐締めの場合紐で行っています)





が、

この均衡の取れた状態から無理矢理な力でもって、ひとつのボルトを一気に締める




なんてことをすると







革の1ヶ所にだけ強い圧力がかかって革が引っ張られる







その他の場所の革がほんのわずか浮き、強い圧力がかかった場所は沈む







鼓面(革表面、太鼓を打つ部分)が完全な平らではなくなるためそこから響く音も悪くなる






鼓面が歪んでいるためたたく場所が偏る







通常よりもかなり早く革が劣化し破れ、壊れる





こうなります。











また、

『締め直し作業は1ヶ所のボルトだけじゃなくて全てのボルトを満遍なく締めていってるから、大丈夫!』


という方も、リッスントゥーミー








その締め直し作業に、一体どれ程の神経を使って取りかかってらっしゃいますか?









お客様にお渡しする前の製出工程の中で、附締太鼓の革を張る作業というものは


ボルト締めだろうが紐締めだろうが、太鼓職人はとんでもない集中力でもって限りなく無音に近い静かな場所でほんのかすかな革の軋みを注意深く聴きながら行っていくものなのです





附締太鼓は毎日締めても、本っっっ当にわずかにですが、毎日ゆるむんですね。





今日はりつめた空気の中で納得がいくまで締め、しかし翌日にはまたほんの僅かにゆるみが発生しているので再び締め直し…それを気温や湿度、天候の変化も加味しながら毎日行い


納得のいく音色になるまで繰り返されるその作業だけで1ヶ月はかかります



革への負担も極力避けるために、当然一度に締める分はほんの僅かです







悲しい事に昨今は粗悪な材料で作られたお粗末な和太鼓も確かに市場には出回っており

そして当然そういった製品には今申し上げたことは当てはまりませんが…



本当の職人さんたちの仕事は、それだけ時間と労力がかかるものなのです











小野崎太鼓店のものに限らずそのようにして製出された本物の太鼓を、



『本番まで日がないから』


『頻繁には見ていられないから』




どうかそんな雑な理由でぞんざいに扱わないであげてください。













締め直し作業の際に僅かに聞こえる革の軋みは『革の悲鳴のようなもの』と、父はそう言います


『まだ大丈夫』『ちょっと痛い』『もう限界』太鼓職人の耳には革の軋みがそう聞こえ、静かに対話しながら締めていくんですね







あくまでこれは製出工程の中のお話ですので、実際にセルフメンテナンスをして頂く場合にそこまでの時間は不要ですが、締め直し作業には実はかなりの時間と神経が注がれているということを知っていただきたかったのです










大きい楽器は大きな力で扱う!






なんてルールはありませーん!



くれぐれも、締め直し作業は少しずつ少しずつ行っていってください





締め直し、ちょっと不安…こわい…というお客様は三代目にご相談頂ければ締め直しの詳しい手順などご説明させて頂きます


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